ヘンリー・ポールソン(著) 有賀 裕子 (訳)
世界を凍りつかせたリーマン・ショックから10年、ということで、今回は危機の震源地である米国で財務長官として事態の打開に奔走したヘンリー・ポールソン氏の回顧録「ポールソン回顧録」を取り上げます。
著者であるヘンリー・ポールソン氏は、有力投資銀行のゴールドマン・サックスでCEOを務めた後、2期目のジョージ・W・ブッシュ政権で財務長官に就任し、未曽有の世界的金融危機に相対することになります。
それだけにどこをとっても興味深いエピソード満載の氏の回想録ですが、個人的にひときわ興味を覚えたのは、リーマン・ショックの前触れとしてGSE債券市場が非常に不安定になっていた時、ロシアと中国が首脳レベルで接触し、ロシアの方から両国の保有するGSE債券を大量に売り浴びせることで米国を窮地に陥らせようという提案が出ていたことです(結局、中国側が応じなかったことで提案は実現せず)。
かつて中国人民解放軍将校が著し、邦訳も話題となった「超限戦」では空売りや売り浴びせ等で金融市場にショックを起こすことを新たな戦争の一形態として挙げていました。
幸か不幸か未遂に終わったロシアの「GSE債券売り浴びせ」提案も同様の戦略的観点からなされたものなのでしょう。
こう言うと、「そんなことをしても仕掛けた側が損するだけじゃないか」と思われる方もおられましょうが、戦争では軍事行動の結果として自軍の兵士や兵器が失われても、それで政治目的が達成されれば勝利となります。
ならば金融市場にショックを与えることで自国の経済がある程度痛もうとも、それで政治目的が達成されればこれも勝利と考えられます。
「儲ける」以外の目的で金融市場を利用する勢力がいつ出てきても不思議ではないのです。
「貿易戦争」「ハイテク覇権」という言葉がニュースに踊り、経済と政治の境が融解する昨今の情勢を思うと、特に興味を掻き立てる箇所でありました。
と、このようなマニアックな見方ではなく、流動性が枯渇して資金の貸し手が続々と消えていく中、市場崩壊を防ぐために政府や中銀に何ができるのかという金融版「危機管理」の実例としても非常に興味深い情報が本書には詰まっています。
あの危機から10年、「次」が気になる方にお勧めしたい一冊であります。
1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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