長嶋 修 (著)
都心では高所得層による湾岸地域のタワーマンション購入が盛り上がり、オフィスや商業施設等についてもJ-REITやその他のファンド等が高水準の不動産価格と物件自体の希少化によって取得に難儀する状態が続いています。
一方で地方では個人の住宅を中心に、売ろうとしても買い手がつかずに放置されていく「空き家問題」が深刻さを増していき、国や地方自治体が対策に乗り出さねばならない事態にもなっています。
全国の不動産価格が揃って右肩上がりに上昇していく「不動産神話」が生きていた頃とは違い、立地や地域人口等の様々な要因で選好される不動産とそうでない不動産の明暗がくっきり分かれる現代。そんな時代に個人が不動産を取得する場合に何に注意しなければいけないのかを扱ったのが、今回取り上げる『不動産格差』です。
本書の構成を大きく分けると、前半部が人口動態や政府、地方自治体の政策といった不動産、特に住居を取り巻く環境の把握、そして後半部では具体的に個人が住居を買う前、買った後に気を付けなければいけない要素の列挙に充てられています。
全体を通して注目されるのは、今後好まれていくであろう不動産の要素として地域人口動態や立地の利便性に加えて「防災」を上げている点です。従来は不動産、特に住居用不動産の評価において等閑視されていた防災性ですが、東北地方を中心に大きな被害を出した東日本大震災はいまだ記憶に新しく、日本の大都市が東京、名古屋、大阪と押しなべて沖積平野と呼ばれる軟弱地盤の上に存在していることを考えると、実に説得力のある指摘です。
主な読者層として住居の購入を考えている、若しくは既に購入した人を想定しているためか、とりわけ後半部で挙げられている事例の説明は、生じがちなトラブル例も含めて具体的でわかりやすい記述となっており、実際に今自分が住んでいる部屋、建物について良し悪しの判断を下してく上でも役立ってくれる一冊と言えるでしょう。
また、J-REIT投資という面では、不動産市況の把握というだけでなく、気になる銘柄が今組み込んでいる、或いはこれから取得する住居がはたして収益性を備えた物件か否かを判断する際のお供として役立ってくれそうです。
1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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